娘が生まれた。
と同時に、一人の母親と一人の父親が生まれた。
令和3年1月22日夜の11時。
娘の産声は、別室から聞いた。
妻は直前で、僕の応援はいらないと言ったそうだ(笑)
分娩室に呼ばなくていいと(笑)
仕事も早退して、ずっと背中を押していたのに最後はいらないとは。
そんなこと考える暇もない、生死をかけた戦いなので仕方ない。
が少し悲しかった。
分娩室に入ると妻の胸の上に赤ちゃんが乗っていた。
もとい、パッと見た時、正直、宇宙人のようなものが乗っているように見えた。
見た目も出で立ちもまさに宇宙人。写真にも収めたが、今みても宇宙人。
産湯に浸かって、べたべたした物も無くなりキレイになってからやっとカワイイという感じだった。
以上が生まれた時の感想。
人生観が変わるとかはあまりなかったなあ。
ただ「ああ、父になったんだなあ。頑張らねば。」と思った。
何を頑張るのかはわからないが、そう思った。
さて、今回は歯科保健指導についてお話したいと思う。
勤務医のころ小児歯科について、子どものお口の育て方についてたくさん勉強した。
いろんなセミナーに参加したし、勉強会にも参加した。
大学の授業では教えてもらえない指導のコツや臨床のコツにワクワクした。
診療では、そこで得た知識をお母さんたちに懇々とお伝えしてきた。
そして自分が親となり、さあ!今度は自分の娘にも!
とおっぱいの吸い方、抱き方など知っている知識を妻に伝えた。
「おっぱいは深く咥えさせるほうがいいよ、お口が育つから」
「左右平等に飲ませたほうがいいよ、姿勢に傾きが出ないように」
正しい知識である。多くの先生たちが本にも書いている。
しかし、妻が当時、気にしていたのは違うことだった。
おっぱいが出るかどうか、ちゃんと飲んでいるかどうか、体重が増えるかどうか。
僕からのお口育てのアドバイスを聞いてはいるが、二の次のようだ。
僕は、子どものお口育てはというのは、全身の健康・成長が満足された上で成り立つものだと痛感した。
親というのはまず
こどもの全身の健康、成長、幸せを常に考えている。
こどもの満足する顔、すやすや眠る顔をみて幸せを感じている。
眠らない、おっぱいを吸わない子どもを抱き不安を抱えている。
僕のお口育てのアドバイスで、お母さんたちは「あ~、あるほど」と言ってくださる方もいた。
今思うと本当に伝わっていたのだろうか、実践してくれていたのだろうか。
子を持つお母さんたちはもっといろんな他の悩み心配をもっていたんじゃないかな。
自己満足の保健指導になっていたんじゃないかなと。
子どもをもつお母さんに寄り添った保健指導は難しい。
その奥の深さを妻と生まれたての娘が教えてくれた。
どんなセミナーよりも勉強会よりも深い学びである。
そこで今現在の僕の答えはこうだ。
「アドバイスは家庭の生活背景を考える。
お母さんに無理強いしないように、寄り添いながら。
出来そうなことから具体的にわかりやすく、面白く。」
まだまだ経験と勉強を積み重なければと日々感じている。
ほりえこども歯科クリニック
堀江将史