今年は早くも梅雨に入り、毎日ジメジメとした日が続いている。
みなさんいかがお過ごしだろうか。
今日のブログのテーマは「おっぱいで寝かしつけ」である。
まずこの話をする前に、ぼくなりのおっぱいと虫歯の関係も少しお話したいと思う。
小児歯科では1歳半を目安に卒乳を勧める。
母乳は1歳半くらいには栄養素的な役割はなくなり、母子のアタッチメント(愛情の表現)の要素が大きくなってくる。
1歳半ともなれば奥歯(第一乳臼歯)が生え始め、離乳食が進んでいるからだ。
一方で1歳半を過ぎた後の夜間授乳は虫歯のリスクが上がる。
今までいなかったむし歯菌(ミュータンス菌)が親から伝播し、子供の口の中に住み始めているからだ。
母乳では虫歯ができないから大丈夫と言われる先生もいるが、ぼくの経験上母乳は虫歯のリスクになりうる。
原因は直前に口の中に残っているプラークだ。
それを残したまま母乳を飲むとむし歯が一定以上のスピードで進むように感じる。
再石灰化を促進する唾液が母乳のせいでいきわたらないからだろう。
そのため学術的に言えば、おっぱいで寝かしつけはむし歯のことだけを考えれば✖なのである。
さて、話は変わりぼくの娘は今では1歳4か月となり、おっぱいで寝かしつけることはなくなった。
部屋を真っ暗にして、静かにしているといつの間にか寝息を立てて寝ていることが多い。
ぼくや妻もそのまま寝てしまうことがもある。
むしろ娘よりもぼくが先に寝ているらしい(笑)
しかし、1歳になる前はおっぱいを飲みながら寝て、そのままそーっとベッドへということも少なくなかった。
もちろんその寝た後は下手なことをしてわが子を起こしたくないという思いがとても大きい。
そんな思いから小児歯科医ながら、歯磨きなどはせずそのまま寝かせる。
診療でお母さんに聞かれることもあった「おっぱいで寝た後、歯磨きをしたほうがいいですか?」
という質問に、ぼくは「ガーゼ磨きだけでもできるといいですね」と答えていた。
しかし、自分がいざその立場になると現実はそうはいかないと感じた。
せっかくスヤスヤ眠った娘の口にガーゼをあてがってまで、歯を磨く必要があるのか。
親の苦労・悩みは自分が体験して初めて共感できる。
おっぱいで寝かしつけにおける結論がこうだ。
「おっぱいで寝かしつけは大丈夫ですよ。でも、できればおっぱいで寝かしつけを始める前に汚れを取ることが大切です。その時には濡れガーゼを使い、唾液を導くとともに、嫌がらない範囲でいいので汚れをとってください。その際に低濃度のフッ素gelを使用するとなおいいですね。」
最後に卒乳がなかなかできないお母さんたちに妻の話をして終わりにしたいと思う。
わが娘を卒乳を1歳前後に終了させた妻はすごい。
というのも日々、小児歯科臨床に携わっているとおっぱいが辞められない子どもはたくさんいる。
その中にはお母さん自身がおっぱいを辞めさせられない人も一定数いる。
どちらかというとぼくは母親の決意が大切なようにも思う。
「もう離乳食たくさん食べるし、乳首も痛いし、やめてもいいよね。むしろ早くやめたい」
これが妻の言葉だ。
ぼくがむしろ「卒乳ってお母さんにとって寂しくないの?」と聞いてしまった。
妻曰く「全然」と。
あっけらかんとしたものである。
親の決意は子どもにも伝わる。
娘は本当にいつの間にやらおっぱいを飲まなくなった。
おっぱいと虫歯のはざまで揺れるお母さんたちには、ぜひ一歩勇気を振り絞って子どもたちをおっぱいから卒業させてあげてほしい。
(※卒乳の時期は全身状態との関係もあるので医科の先生とも相談の上、総合的に判断をしましょう。)
ほりえこども歯科クリニック
堀江将史